〜1番目の街〜
衝撃が来た。
何かに、頭をなぐられたような感じ。
目がちかちかして、体が一気に重くなる。
熱いし、息がしにくい。
音と、光と、纏わりつくような空気が一瞬に押し寄せてきて…
さっきまでの静寂からの落差に、頭が動いてくれない。
確か…
”扉”が開いて、向こう側の風と音と光が漏れてきて、
なんだか懐かしいような気がして…それで…
「ほ。お前さん、どっから来なさった?」
どこからか声がした。
ゆっくりと目をあける。
目の前には老人がいた。
「なるほど…異邦のお方か…久しぶりじゃのぅ」
その老人は、そう言ってくしゃくしゃの顔に、さらにしわを寄せるようにして目を細めた。
そうして、”私”を上から下まで眺めてから、自分が座っている敷物の隣を指差した。
座って、辺りを見渡す。
そこは市場だった。
熱気と喧騒に満ち溢れている市場。
足元は全て板張りで、広い通りの左右には露店が並んでいる。
露店の後ろ、道の端には、やはり木の柱がたくさん並んでいて、その上にも板が渡してあるようだった。
上の板も、人がすれ違えるくらいの幅があり、さらに柱が並んで、その上に板が…
そこまでぼんやりと眺めて、”私”は視線を上に向けた。
今いる大通りをはさんで、街が、上に上にと延びていた。
ここは…
どこ?
「お前さん、異邦に迷うのは初めてのようじゃな」
そう、わたしは迷子。
どこへ行くのかどころか、どこから来たのかすらわからない迷い子。
「お前さんがこの街に来た理由、それを探すがよい」
見上げたまま応えぬ”私”には構わず、老人はそう続けた。
理由?
私がここにいる理由?
視線を老人に転じる。
老人はこちらを見ていた。
「さ、もう行きなさい」
言って、老人は”私”の手を取り、何かを握らせた。
手を広げ、ぼんやりと見る。
それは透明なクリスタルだった。
「お前さんの旅に幸あれ…」
”私”は名も知らぬ老人からの贈り物を手の中に感じながら、ゆっくりと立ち上がった。
私が”ここ”にいる理由。
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