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”私”は立っていた。
狭い、といっても詰めれば大人が3人くらいは並べる幅の石畳の通り。
左右には煉瓦造りの壁。
前を見ても、後ろを見ても、遥か遠くまで続いている。
壁の頂上は見えなかった。少なくとも”私”には。
見上げる空を分断するようにそびえ立つ、一対の壁。
それによって他から隔てられた、長い長い道。
そんな場所に、”私”は立っていた。
どちらから来たのか、どこへ行こうとしていたのか、いくら探っても、頭がぼんやりしていてよくわからない。
”私”は辺りを見回した。
わかった。
あそこだ。
遠く、遠くに、扉が見えた。
大きな、大きな扉。
壁と同じように高く、同じように絶対的な隔たり。
”私”は歩き出した。
きっと、あの扉のところまで行く途中だったんだ。
なぜだかわからないけれど、そんな気がした。
”私”が迷い込んだのは、
童話のような、不思議な世界。
そんなお話。
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